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1. はじめに

BIM/CIMの適用により建設分野にも3次元モデルを導入する機会が増え、その中で地盤内の地質・土質分布及び物理・化学的特性を可視化した3次元地質・地盤モデルも利用されるようになってきました。3次元地質・地盤モデルは様々な地盤情報を用いて構築されますが、そのモデルの品質や信頼性を明示しないと、ユーザーはどう判断して利用すれば良いのか迷うことになります。このことは、建設プロセスにおいて3次元地質・地盤モデルを利活用するためには、改めてモデルを作成する側の技術的責任が重要であることを示しています。


 一方で、地質調査分野ではワークステーションが導入された時代から、 3次元地盤モデリング(3次元地質解析技術)が資源探査や各種地盤解析、研究目的で導入されてきました。導入当初はそのシステムを利用するにはハードウェア/ソフトウェアの費用や訓練を含めたトータルコストが高く、PCが一般に普及するまでは建設分野への技術の浸透は進みませんでした。現在では、ハードウェア/ソフトウェアのコストダウンと高性能化が進み、3次元技術の敷居も低くなり、国内外で様々な専用ソフトウェアが利用されています。しかし、3次元地盤モデリングの在り方を見ると、モデリング手法は専用ソフトウェアのルールに強く依存しています。3次元地盤モデルを作成するための技術標準も存在しないのです。


 BIM/CIMの観点から、建設ライフサイクルで3次元地盤モデルを利活用するには、信頼性を保持し合理的に利活用するための、3次元地盤モデリングの標準的な流れが必要です。そのような背景から、地質調査に関わる民間事業者は危機感を共有し、「3次元地質解析技術コンソーシアム」を2017年2月に設立しました。「3次元地質解析技術コンソーシアム」は、日々進歩するBIM/CIM関連技術に対応するべく、実務に直面する建設関連業に携わる技術者が集まり、BIM/CIMに繋げるための3次元地質・地盤モデルの作成技術の標準化と普及を目的に活動を進めております。そして、3次元地質モデルの利活用事例から、構築方法、関連技術など、BIM/CIM分野へ適用する際の要点や留意点をまとめた「3次元地質解析マニュアルVer1.0」を作成し2018年3月に公開しました。改定を重ねて現在はVer3.0を公開しています。また、対外発表や技術セミナーの開催など、コンソーシアムの活動紹介や技術普及を進めてきました。


 特に、「3次元地質解析マニュアル(以降、技術マニュアル)」は専門的な内容も多く、ボリュームがあることから、もっと読みやすい資料が求められていました。本書は技術マニュアルから重要な内容をピックアップし、BIM/CIMで利用されることを念頭に、基本編は発注者・受注者向け、実務編は受注者向けを想定しています。本書の記述についてより詳しい内容や具体事例について知りたい場合は技術マニュアルを参照下さい。

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