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9. データ品質管理

9.3 図面データの品質確認

Point.3 図面データの品質を確認する

図面データはある時点までの地質調査により作成された、地質平面図・断面図等の解釈図を指します。3次元地質・地盤モデルを作成する際に、既存調査や文献資料等で作成されているものを用いて、ボーリングデータ等の追加調査結果を評価する際に活用します。また、図面データを直接用いて3次元地質・地盤モデルを作成することもあります。

Fig090301.png

図9.3-1 位置正確度に問題のある地質図面の例(引用:1)

■地質平面図の品質確認
地質平面図は、地形の等高線を用いて地質図学と地質技術者の科学的解釈により作図されるため、その精度は地形図の精度に依存します。地質平面図は、一般に地表地質調査などの地質調査を実施する際に入手した地図が基図となります。そのため、地質平面図の精度は、調査時の地形図以上になることはありません。
 近年、LP測量等を用いたDEMデータの地形図が利用されるようになり、これを用いた地質平面図の精度は向上していると言えます。その反面、DEMデータの地形図を基図として、これに古い地形図を用いた既存地質図を重ねても、地形・地質学的に矛盾が生じる(図9.3-1)ため、既存地質平面図をそのまま利用することは困難です。このような場合に既存地質図を生かすには、一次情報となるルートマップまで遡りチェックするか、あるいは地表地質踏査をやり直す場合もあります。

■地質断面図の品質確認
地質断面図はボーリングデータなどを基に、地質技術者の科学的解釈により作成された図面です。図面としての基本的な品質確認項目としては次のものが挙げられます。
  ①CAD地質断面図の単位系
  ②位置基準の記載の有無
  ③断面測線を記載した平面図の有無
  ④地質等凡例の有無
  ⑤縦横比
  ⑥目盛や標尺の長さ
 
 また、後述する様々な原因(表9.3-1)により、複数の地質断面図間では、交差する地質境界のズレ(図9.3-2)や不一致が生じる場合があります。地質境界のズレについては、地質境界線を用いて3次元サーフェスモデルを作成する際に、わずかな誤差でもモデルの歪として現れる(図9.3-3)ため、交点誤差が最小になるように調整する必要があります。

Fig090302.png

図9.3-2 交差する地質断面の地質境界のズレの例(引用:1)

Fig090303.png

図9.3-3 交点誤差によるサーフェスモデルの歪みの例(引用:1)

■地質断面図の品質確認
地質断面図間に生じる不適合とその原因について表9.3-1に示します。他にも、下記のように不適合以前に技術的未熟ともいえるような問題もあるので、既往資料の地質断面図を利用する場合は注意が必要です。 

【地質断面図の不適切な例】
  ◆追加調査が追加されたのに地質図面を更新しない
  ◆ボーリングを投影したのに投影距離が示されていない
  ◆ボーリングの投影距離を無視し、投影ボーリングを直線・曲線で結ぶ地質境界を描く
  ◆道路曲線線形で湾曲しているはずの地質境界が直線で描かれている(つまり2点間を直線で結んでいるだけ)

 以上の不適合は、3次元地質モデルを構築するプロセスで発見次第、是正することになります。実際にコンソーシアム会員が経験した事例の一部を図9.3-4~7の模式図で示します。
 

表9.3-1 地質断面図における不適合と原因の例(引用:1)

tb090301.png
Fig090304.png

図9.3-4 交差断面で地層形状の解釈が異なる例(引用:1
同じボーリングデータを使用しているのに、思想に統一性が無い

Fig090306.png

図9.3-6 地層累重の法則に反する例(引用:1

Fig090305.png

図9.3-5 交差断面で地質解釈が異なる例(引用:1
同じボーリングデータを使用しているのに地質解釈が違う
結果、断面の交点が合わなくなっている

Fig090307.png

図9.3-7 螺旋状の地質解釈例(引用:1
複数の格子断面で緩傾斜の堆積岩互層を描いているが、
一つの断面における傾斜判定ミスが他の断面に波及した 

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