3. 3次元地質・地盤モデルとは
3.3 利活用場面
Point.3 3次元地質・地盤モデルには様々な利活用場面がある
3次元地質・地盤モデルは、二次利用、地質解析、可視化に利活用されます。さらに、地質・地盤リスクコミュニケーションツールとしての利活用も期待できます。
図3.3-1 建設事業の流れに対する地質調査(引用:3に追記)
■建設プロセスにおける地質・地盤モデルの利用
建設プロセス(図3.3-1)において、3次元地質・地盤モデルを利用する場面は、以下の四段階が考えられます。
【計画段階】
地質・地盤リスクを評価するために、比較的広範囲の3次元地質モデル(サーフェスモデル)を作成する。広範な地質情報にはバラツキや不統一があるため、まず地質情報の整理・統合を図ることが必要となる。
【設計段階】
地質調査結果を基に、対象区域の3次元地質・地盤モデルを作成する。構築された地質・地盤モデルを基に設計を行う。ダムなど長期にわたる事業では、調査の進捗に伴う地盤情報の増加に対し、適切なタイミングでモデルの更新を図り精度を向上させる必要がある。
【施工段階】
施工実績により得られた情報により、設計段階で構築した3次元地質・地盤モデルを適宜修正する。
【供用段階】
定期点検結果などを基に、施工段階で構築・修正された3次元地質・地盤モデルを更新する。
■3次元地質・地盤モデルの具体的な利活用場面
BIM/CIM試行以前より、3次元地質・地盤モデルは様々な場面で利用されており(表3.3-1)、BIM/CIMにおける利活用場面のヒントになると考えられます。
表3.3-1 3次元地質・地盤モデルの具体的な利用場面(引用:1)
■地質・地盤リスクのコミュニケーションツール
地質・地盤の不確実性や地質・地盤リスクをあらかじめ知ることで、建設コストの増大や大きな事故を防ぐための対応を図り、工事の生産性向上、品質向上、トータルコストの削減に寄与することが可能と考えられます(図3.3-2)。
複雑な地質構造を3次元表示することにより、地質技術者以外でも具体的なイメージを把握しやすくなります。また、地盤情報となる露頭やボーリングと3次元地質・地盤モデルの位置関係を把握し易くすることにより、直感的にモデルの信頼性・妥当性や地質・地盤リスクを知ることが可能です。さらに、3次元地質・地盤モデルの品質保証情報をモデルに付与するなどして、モデルの精度や限界、尤もらしさ等をわかり易く理解できる仕組みも可能です。
これらの特性を利用して、全ての建設プロセスにおいて地質・地盤リスクを共通認識することで事業コストの予期せぬ増大を未然に防止することが望まれます。その結果、建設プロセスにおけるトータルコストの削減も期待できます。
図3.3-2 事業の各段階における地質・地盤リスクマネジメントのイメージ(引用:4)
■業務改善への利用
追加調査による再検討が必要な場合、3次元地質・地盤モデルを修正すれば即時に各種図面(断面図、コンター図等)に反映されるメリットは非常に大きいと考えられます。従来法で生じやすい地質断面図の交点が合わないなどの単純なミスを防止することも期待されます。
また、多数の地質断面を作成する場合も大幅な作業の効率化が期待できる。早い段階で3次元地質・地盤モデルを構築しておくと、従来の手作業に比べて作業を効率化し、作業時間全体の短縮が可能と考えられます(図3.3-3)。