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災害時等における3次元地質モデルの活用事例

株式会社アバンス

山下 隆之  梅﨑 基考  宮﨑 康平  

 <概 要>

今回紹介する事例は、災害時や災害復旧、復興において、3次元地質モデルを有効活用したものである。従来、災害対応は迅速性を求められるため、場合によっては現場で紙と鉛筆でとりまとめた資料をもとに、対応方針を打合せする事があった。しかし、近年の各種技術の進歩により、地形の3次元モデルを迅速に作成する技術が普及しつつある。
 そこで、我々の課題として、1)3次元地形モデルを活用した現地踏査、調査データの速やかなとりまとめと情報共有、2)作成した3次元地質モデルを如何にして設計および施工段階へ円滑に共有、受け渡すことができるかどうか、が挙げられる。
 本紹介では、熊本を襲った平成28年熊本地震、令和2年7月豪雨からの復旧、復興において、上記課題点を意識して、3次元地質モデルを利活用した事例を紹介する。

1.はじめに

  • ㈱アバンスは、平成28年熊本地震や令和2年7月豪雨において、災害協定等に基づき、災害対応(地質調査、測量・設計)を実施した。

  • 特に、熊本地震では、「発災後の現地状況の把握」と「速やかな情報共有と対応方針の作成と協議」が重要であると痛感した。

  • そこで、当社の、1)ドローンレーザー測量およびドローンによる写真測量技術を活用した現地状況把握、2)3Dレーザースキャナーを活用した地形状況の把握事例について紹介する。

  • あわせて、災害からの復興に際し、多くの関係者(発注者、施工会社、設計会社)と情報共有ができるように、3次元地質モデルに準拠した資料作成を行った事例を紹介したい。

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2.令和2年7月豪雨における事例

  • 熊本地震からの復旧・復興の最中である令和2年7月に、熊本県内でも甚大な被害が発生した令和2年7月豪雨における事例を紹介する。

  • 特に、迅速な応急復旧対応と発災時の現状把握(工事や降雨等で地形はすぐ変わってしまう)を行う事が大きな課題であった。

2.1 橋梁被災個所における全体像把握事例

  • 本現場は、令和2年7月豪雨によって上部工のほとんどが流出した橋梁が対象である。

  • 課題としては、残存した下部工の安定性を評価するため、洗堀・堆砂を確認する必要があり、1)全体像の把握、2)地形変化が大きい箇所の抽出、3)調査位置の選定と情報共有が課題であった。

  • そこで、ドローンを用いた写真測量を実施し、現地状況の3次元モデル化を行った。

  • そのモデルを用いて、情報共有を行うととも、調査方法の検討を行い、各種作業の迅速化、効率化、省力化を図ることができた。

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2.2 洗堀調査への活用事例

  • 本現場も、令和2年7月豪雨によって上部工が流出した橋梁が対象である。

  • 橋脚周りに典型的な洗堀・堆砂がみられるが、下部工の点検や出水による地形改変が想定されたため、迅速に現地状況を把握する必要があった。

  • そこで、3Dレーザースキャナーを活用し、現地状況を詳細に把握、記録するとともに、調査位置の選定の協議に活用することができた。

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2.3 斜面災害での活用事例(1)

  • 本現場、令和2年7月豪雨において、地すべり性変状が発生した地区が対象である。

  • 対象地では、1)迅速な変状範囲の特定、2)観測体制構築のため迅速な調査位置選定と調査開始、3)これらの情報共有が課題であった。

  • そこで、従来の現地踏査、トータルステーションを用いた測量と並行して、ドローンレーザー測量を実施し、現地の可視化、作業効率化を図った。

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2.4 斜面災害での活用事例(2)

  • 対象地は、令和2年7月豪雨後に道路面の変状が確認された場所である。

  • 発災時は道路の通行機能は確保されていたが、変状拡大有無によっては緊急通行止め等の判断が迫られた場所であった。

  • そこで、現地踏査と並行してドローンレーザー測量を実施し、全体像の把握、変状メカニズムの検討、各種観測機器の設置計画等の立案を行う等の対応を実施した。

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3.設計・施工上の留意点整理ツールとしての活用

  • ㈱アバンスでは、地質調査だけでなく、測量・設計まで一貫した業務を行うことを会社の特徴としている。

  • また、施工現場にも積極的に参画するととともに、補足調査に協力したり、調査を実施した者として各種助言等を行っている。

  • その中で、特に関係者から言われることが、「地質断面図は良くわからない」という事である。我々が「一人よがりになっていないか」考える必要がある話である。

  • そこで、当社では、各種3次元地質モデル等を活用し、地盤の「見える化」と課題点の確実な情報共有に努めている。

  • ここでは、建築構造部tの支持層見える化例、新規道路の設計・施工上の留意点(地質リスク)整理事例を紹介する。

3.1 建築構造物の支持層モデリング事例

  • 本事例は、熊本地震で被災した公共施設の再構築に際し、支持層確認の地質調査(ボーリング調査)結果をとりまとめた事例である。

  • 通常であれば、柱状図、(2次元)地質断面図が成果となるが、関係者から、1)地層が複雑でどこが支持層が分からない、2)断面図だけでは地層の傾斜がよくわからす杭長の根入れ不足に注意すべき範囲が良くわかない、という要望がでた。

  • そこで、調査結果をもとに、支持層と軟弱層下面にフォーカスした3次元地質モデルを作成し、関係者と情報共有を行った。

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3.2 受発注者および社内での情報共有

  • 本事例は、写真測量データを活用し、現在の調査個所や周辺の地形等を受発注者および社内で共有しながら調査を実施した事例である。

  • 今後、3次元モデル作成や地表踏査結果、崩壊個所等の情報を整理する予定である。

  • また、こうした情報をGIS化することで、より視覚的かつ地質以外の情報の複層化が可能と考えている。

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4.まとめ

  • 近年のi-Constructionの推進により、機材が大幅に進化しているだけでなく、「いかに分かりやすく情報を共有するか」という事が大きな課題となっていると感じる。

  • また、新型コロナ禍において、対面での打合せや移動に制約が出ざるを得ない中、視覚的に課題点を整理し、かつWeb会議や電話等で円滑に意思疎通を図ることができる事が、今後さらに重要視されると考える。

  • 併せて。3次元地質モデル作成には地質学、地盤工学の素養が必要となるため、原点に返って、若手社員に「地質」とは何か、現場で伝承していく事も重要であると考える。

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