OCTAS Modelerを用いた3次元地質・地盤モデルの継承と利活用

応用地質株式会社

西山 昭一  

 <概 要>

建設ライフサイクルにおける3次元地質・地盤モデルデータの利活用を支援するために、3次元地盤モデル構築・管理システム「OCTAS Modeler」を開発した。 「OCTAS Modeler」は、3次元可視化・解析機能を有し、3次元地質・地盤モデルとその構築に関わる地質調査データ、地質解釈データ、地質・地盤リスク情報、モデル利活用に関わる属性情報を一元管理し、可読性のあるデータとして格納することが可能なプラットフォームである。本システムにより、事業に深刻な影響を与える地質・地盤リスクの見える化やリスクマネジメント情報の共有、次の事業プロセスへ地盤のBIM/CIMデータを継承することを目指していきたい。

1.はじめに

国際的なBIM(Building Information Modeling)市場の広がりやICTを活用した社会全体の生産性向上の取組みを受け、わが国の建設分野では、国土交通省が推進するBIM/CIMを活用する事業が拡大している。2023年とされるBIM/CIMの義務化は、インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を一層促進すると考えられる。一方で、2019年に改正された「公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)」により、地質・地盤リスク情報を提供する地質調査サイドの責任は、更に重いものとなった。
 BIM/CIMの浸透は、これまでの地盤情報の共有や継承の在り方も変革を余儀なくされていることを示しており、そのようなDX化に合わせて、品確法が要求するような、信頼性の高い地質・地盤モデルを、建設ライフサイクルの要所で提供する必要がある。以上の変化に対応するため、建設ライフサイクルにおける3次元地質・地盤モデルデータの利活用を支援することを目的に、3次元地盤モデル構築・管理システム「OCTAS Modeler」を開発した。 

2.開発コンセプト

「OCTAS Modeler」の開発コンセプトを図1に示す。特に、簡単な手順で地下情報を可視化し、少ない手順で3次元地質・地盤モデルを構築することや、テータの持続性と共有、モデルの更新性を重視した。3次元地質・地盤モデルの構築・更新を省力化するためには、必要最低限の手続きで3次元地質・地盤モデルを作成するとともに、データの追加・見直しによる更新作業を短時間で済ませることも考慮する必要がある。
 3次元地質・地盤モデルの品質は、モデル構築に関わるファクトデータの地質調査情報(電子納品データ含む)、地質解釈情報、地質・地盤リスク情報、および属性情報を一元管理し速やかに引き出せるようにすることで、確保することができると考えられる。都市インフラや大型プラント等の重要構造物の多くは平野部に建設されているため、需要の高い都市部をターゲットに3次元地質・地盤モデルを作成できる機能を優先的に実装した。なお、山岳地にみられる断層、褶曲、岩盤の亀裂・断層などの不連続面、地山分類、地すべりなどの複雑な地質・地盤モデルの場合は、高度なモデリング機能が必要なので、弊社製品では「GEO-CRE/GEO-CRE Pro 」の利用を推奨する(図2、表1)。

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図1 OCTAS Modelerの開発コンセプト

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図2 OCTAS Modelerの役割

表1 ソフトウェア機能比較

図2 

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3.機能概要

(1)データの一元管理
全データは、プロジェクト管理機能により、データのカテゴリー毎に分類して所定のフォルダに格納する。様々な建設情報システム・プラットフォームで利用できるように、取り扱う地盤情報と3次元地質・地盤モデル、および、属性情報はオープンフォーマットを採用した。
 属性情報は、「3次元地質解析技術コンソーシアム」で検討している地盤モデルの属性情報様式を導入した。ただし、地盤に対応するBIMデータ交換標準が未確立なため、当面は外部参照ファイルへの記録としている。
 地質・地盤リスク情報はpdf等のドキュメントファイルを格納し、画面上のリンクを使用して表示する。

(2)モデリング機能
簡易な手順で3次元の地層モデル、支持層モデル、土質区分モデル、地盤強度モデル、地下水面モデルを作成することができる。境界面の補間にはBS-Horizon(引用:1)を採用し、3次元補間アルゴリズムにはIDW(逆距離加重法)を採用した。将来的に補間アルゴリズムの拡張も可能である。

(3)基本機能
インターフェースは3次元ビューアと必要最低限のボタン、モデリング操作パネルで構成される。操作パネルは、簡易GIS機能、モニタリング機能、プレビュー画面、時系列データ(図4)・モニタリングデータ(図5)の検索・抽出が可能なデータビュー機能を持つ。レイヤ設定の一括保存や3次元ビュアの視点を保存することも可能である。
 ウォークスルー機能は、使用者の視線で3次元データ・モデルを可視化することが可能な簡易VR機能であり、ウォークスルーパスに沿った視点移動も可能である。
 地盤情報の編集機能として、柱状図の編集や、国交省様式・簡易柱状図等の表示・印刷を可能とする。各種モデルの断面図作成と、作成した断面を2次元CAD断面で出力することも可能である。

(4)可視化機能
3次元可視化するデータ(フォーマットの拡張子)は下記のようになる。
 ・ボーリングデータ(*.xml DTD2.1,3.0,4.0)
 ・物理探査データ( *.inp(AVS UCD形式))
 ・地形データ(*.csv)
 ・準3次元図面(*.dxf)
 ・サーフェスモデル・ボクセルモデル(*.csv)
 ・色付き点群データ(*.txt,*.las)
 ・テクスチャ付き3次元モデル(*.wrl)
 ・他のソフトウェアで作成された地質モデル(*.dxf)
 ・計測/モニタリングデータ(*.csv)

(5)納品・データ継承・共有
OCTAS Modelerのデータセットは「BIM/CIM モデル等電子納品要領(案)及び同解説ガイドライン」(引用:2)に則り、フリービュアのOCTAS Managerで納品する。
 限定的な3次元モデルデータを納品する場合は、フリービュアOCTAS用の圧縮ファイルを使用できる。なお、圧縮ファイルはセキュリティを高めるために暗号化することも可能である。

 

4.利活用場面

OCTAS Modelerの利活用場面を4例紹介する。
(守秘義務のため、本文と図の内容は同じものではない)

◆地盤改良工の効果や日々の進捗管理をモニタリングし、3次元地質・地盤モデルと改良不良部の関係を把握し、改良予測や資材調達計画に利用する。

◆津波シミュレーションの結果を時系列で可視化し、航空レーザーや地上レーザー(図6)による点群データを重ね合わせ、避難行動計画に利用する。

◆エネルギープラントの強靭性評価において、既存地盤情報より3次元地質・地盤モデルを構築し、模擬地震波の設定、揺れ易さ評価、液状化評価をおこなう。

◆地下インフラのハザードマップを作成するために、既存・新規の地盤情報や3次元物理探査(図7)等を用いて3次元地盤ボクセルモデルを構築し3次元の液状化評価をおこなう。
 

図3 

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図3 OCTAS Modelerの機能イメージ

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図4 時系列データの可視化例

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図5 モニタリングデータの可視化と検索・抽出例

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図6 地上レーザー点群データの可視化例

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図7 3次元物理探査データの可視化例

5.おわりに

OCTAS Modelerは、BIM/CIMに関わる地盤情報の統合管理・3次元モデル化・情報共有などに利活用できる手軽なコミュニケーションツールとなるべく、今後も各種機能の強化と拡充を図っていく。

【参考資料】

 1) 野々垣 進.升本 眞二.塩野 清治.”3次B‐スプラインを用いた地層境界面の推定”. 情報地質. 2008, 第19巻, 第3号, pp.61-77.
 2) https://www.mlit.go.jp/tec/content/001334807.pdf(2020年10月時点)