Geo-Graphiaを用いた公共事業計画に係る地質モデルの利活用

~ 地層処分事業を事例として ~

株式会社 地層科学研究所

天野 大和  古林 慧一  

 <概 要>

 地層科学研究所では、地下情報の3次元統合可視化ソフトウェアGeo-Graphia® (ジオ・グラフィア)を用いて、既存のデータから3次元地質モデルを構築するだけでなく、そのモデルを数値解析モデルとして活用している。Geo-Graphia®は、各種データ(図面・地形・地質・解析・計測)を取り扱う機能を備え、それらを一元管理し、機能間での連携が可能である。地質技術者と解析技術者、現場管理者間の共通ツールとして、現場の意思決定を支援している。今回のような、公共事業計画での施設建設候補地の選定にあたっては、複数候補地に関する様々な情報を収集・可視化し、比較検討により候補地の絞り込みの材料となるデータを作成することが可能である。またステークホルダーの理解が得られるように、地質・地盤モデルを見える化してわかりやすく表現することは、客観的に対象を比較・
評価するうえでも有用だと考えられる。

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1.はじめに

 現在、わが国では、地層処分に向けた研究開発が加速されつつある。サイト選定は、文献調査・概要調査・精密調査を経て行っていくことが決まっている。(国研)産業技術総合研究所、鹿島建設(株)、(株)地層科学研究所は、3つのプロセスの内、文献調査と概要調査に焦点を当て、地質に関するデータが多く公開されている幌延地域を対象に、選定プロセスに沿った地質構造モデルの構築を試みた*)。ここでは、モデラとしてGeo-Graphia を用いて行われた、文献調査段階での地質構造モデルの作成、および概要調査段階での地質構造モデルのリバイスまでの一連の作業と、地質構造モデルの活用事例を紹介する。

2.使用した情報・データ

 今回は、地質に関するデータが比較的多い北海道幌延エリアを対象にモデル化を行った。天塩川河口を中心に、陸側20km・海側20kmの矩形領域(40km×40km)とし、モデルの下限標高を-4kmに設定した。

3.概念モデル構築からSDM*(地質環境モデル)構築まで

*SDM=Site Descriptive Model

概念モデルからSDM構築までの一連の流れを紹介する。
 ■文献調査段階:概念モデルの構築→ステークホルダーの理解促進・考察の材料
 ■概要調査段階:SDMモデルの構築→モデルを多角的に活用する材料

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4.見える化した概念モデルの活用事例

活用例1 概念モデルの多様性

概念モデルは既存情報の量やエキスパートジャッジによって、複数の概念モデルを構築することができる。左図に示した概念モデルもそのうちの1つである。その他にも、不確実領域の構造について様々なパターンを想定したモデルや、データを制限したモデルといったものがある。ここでは、左図の概念モデルとは異なる概念モデルを紹介する。

■ 公的機関の発行した地形図や地質図のみを使用した概念モデル

使用データ

公開されている陸域と海域の地質図データ

地質図の境界線のみを使ってモデルを構築

公的機関の発行した公開データのみで構築した概念モデル(エキスパートジャッジなし)は、誰でも同様のモデルを作ることができるため、情報共有がしやすく、ステークホルダーとの対話をスムーズに進めることに役に立つと考えられる。

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活用例2 SDM(Site Descriptive Model:地質環境モデル)への進化

Geo-Graphiaは、様々なファイル形式でデータのインポート・エクスポートが可能である。特に、自身でテキストが編集できる場合、工夫次第では複雑な情報の可視化が可能である。本例では、ある地質情報の有無が、どれほどモデル推定結果に影響を与えるかを可視化した。
1)異なる材料から二つの地質モデル(モデル1・モデル2)を作成。(表-1)(図-1)
2)二つの地質モデルをGeo-Graphiaの「ソリッドモデル機能」を使用し、それぞれ同形状のソリッドモデルに変換。
3)2)のソリッドモデルデータをテキストファイルとして出力。
4)3)のテキストファイルを用いて同じ場所の要素について、ExcelのExact関数を利用して要素材料名の同異を判定。
  相同の場合:材料を”same”と書き換え、相違の場合:材料を”changed from ○○ to ××”と、材料変化を書き換え。
5)4)のテキストファイルをGeo-Graphiaへインポートすると、モデル推定結果の差異を描画で確認が可能である。
  (図ではモデル間で変化のなかった”same”を非表示)(図-2)

表-1 地質モデル作成に使用したデータ

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図-2 二つのモデル推定結果の差異を示すソリッドモデル

図-1 異なる地層情報から作成した地質モデル(左:モデル1、右:モデル2)
    ※Geo-Graphiaにて、高さ方向のみ5.06倍に拡大表示

活用例3 概念モデルを用いた広域地下水流動解析に関する検討

地質的・水文学的知見を活用しながら解析的検討を実施することで、次ステップである地質環境モデル構築に活用できる情報を提供できると考えた。このような検討手順の確立に向け、水理境界を考慮した概念モデルを構築し、地下水流速分布に関する透水係数の感度解析を行った。
検討手順の一環として、次段階エリア選定の観点から海水準変動を考慮した密度流解析により、水理地質環境が安定な領域の抽出を試みた。

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密度流解析結果を使い、地下水流動が小さい滞留域と考えられる領域の抽出を行った。このようなエリアの抽出は、概要調査段階のエリア選定や概念モデル更新のための物理探査位置の選定などに活用できると考える。今後は、今回使用していない物理探査データを用いたモデル更新や密度流解析を用いた感度解析などを行い、検討手順の充実を図っていく。

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概念モデル・SDMモデル作成時に利用した参考文献(青字 1)~6) :「2.使用した情報・データ」の引用文献、黒字 7)~11):モデル作成時の参考文献)
1)一般財団法人電力中央研究所,地層処分技術調査等委託費(地層処分共通技術調査:岩盤中地下水移行評価技術高度化開発)-地下水年代測定技術- 報告書,pp.402-415,2011.2)太田ほか,幌延深地層研究計画における地上からの調査研究段階(第1段階)研究成果報告書 分冊「深地層の科学的研究」,JAEA-Research,2007-044,pp.43-58,2007.3)国立研究開発法人産業技術総合研究所,国立研究開発法人日本原子力研究開発機構,公益財団法人原子力環境整備促進・資金管理センター,一般財団法人電力中央研究所,平成28年度地層処分技術調査等事業沿岸部処分システム高度化開発報告書,pp.10-25,2017.4)地質調査所,天塩,1:200,000地質図,NL-54-17,1969.5)  地質調査所,遠別,図幅旭川第22号,1968.6)独立行政法人産業技術総合研究所,沿岸域塩淡境界・断層評価技術高度化開発平成24年度成果報告書,ISSN 1881-8838,pp.112-144,2012.

7)石井ほか,北海道北部,幌延地域における大曲断層の三次元分布と水理特性,地質学雑誌,第112巻,第5号,pp.301-314,2006.8)一般財団法人日本水路協会 海洋情報研究センター, 海底地形デジタルデータM7000シリーズ, M7015, Ver. 2.0.9)国土地理院, 基盤地図情報 数値標高モデル,10mメッシュ,674106,674107,674116,674117,674125,674126,674127,674135,674136,674137,674145,674146,674147.10)独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合センター,天売島周辺海底地質図,海洋地質図,75,2012. 11)  北海道立地下資源調査所,豊富,図幅旭川第15号,1960.

*)本ポスター関連文献

1)古林ほか,沿岸部における3次元地質モデルの構築, JpGU2020(日本地球惑星連合) , 2020.7  
2)細野ほか,仮想トンネルモデルによる3次元浸透流解析,第14回岩の力学国内シンポジウム, 2017年1月 講演番号0120
3)丸井ほか,沿岸部の地球科学的特性を考慮した,地球科学文献・3次元地質・地形データベース構築,令和2年度土木学会第75回年次学術講演会,

  2020年9月,CS12-41
4)天野ほか,処分地選定プロセスに則った沿岸部における3次元地質モデルの構築,令和2年度土木学会第75回年次学術講演会, 2020年9月CS12-42
5)田部井ほか,沿岸部の地層処分における概念モデルを用いた広域地下水流動に関する一検討,令和2年度土木学会第75回年次学術講演会,2020年9月,

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