ダム堤体基礎地盤の改良評価事例

株式会社ダイヤコンサルタント 

木村 仁  小島 佑季彦  

 <概 要>

 ダム建設時には、堤体基礎地盤中の透水構造を通じた水の流出を防ぐため、堤体基礎地盤をグラウトによって改良する。透水構造の3次元モデルを構築してグラウト孔のルジオン値分布とともに3次元的に視覚化したことで透水構造の改良状況の確認が容易になり、堤体基礎地盤の改良の確実な実施に資することができた。

1.はじめに

 ダム建設時には、堤体基礎地盤中の透水構造(高透水層、断層、連続する開口割れ目等)を通じた水の流出を防ぐため、堤体基礎地盤をグラウトによって改良する。この改良では、はじめに規定の間隔でボーリングを掘削してルジオン試験を実施し、セメントを注入する。次にルジオン値が規定値よりも大きかった孔の周りについて、間隔を詰めて同じことを実施し、ルジオン値が規定値よりも大きい孔がなくなるまでこの作業を繰り返している。
 本ポスターでは、ダムの建設段階の照査の一環として、ダム建設工事JVからの委託により、透水構造の3次元モデルを構築してブランケットグラウトによる改良状況を評価した事例を紹介する。3次元地質解析システムはVULCANを使用し、地質技術者がモデル構築を実施した。

2.使用したデータ、モデル

 透水構造の3次元モデル構築に使用したデータ、モデルは次のとおりである。図1に堤体基礎掘削面モデルと既往断層コンターおよびコンターを単純に連結して作成した断層モデルを示す。
◆堤体基礎掘削面モデル
◆堤体基礎掘削面の割れ目データ
・スケッチをCAD化したもの
・主要な割れ目には走向傾斜の記載あり
◆既往断層コンター
・地質総合解析業務で作成されたもの

 透水構造の改良状況評価に使用したデータ、モデルは次のとおりである。
◆透水構造3次元モデル
◆ブランケットグラウト孔の位置、掘削順序(次数)、ルジオン値

 

図1 堤体基礎掘削面モデルと既往断層コンター、モデル鳥瞰図

3.構築した3次元モデル

①透水構造の選定
 2.に記したデータ、モデルを使用して透水構造3次元モデルを構築した。モデル構築の対象とする透水構造は、堤体基礎掘削面の割れ目データの中から次に該当するものを地質技術者が選定した。
◆地質総合解析業務で断層コンターが作成されている断層
 (選定手順)・図1に示したようにコンターを単純に連結して断層面を構築する
          ・断層面と堤体基礎掘削面の交線(図2の黄色い線)を発生させる
          ・位置、走向等から上記交線と対応していると判断できる割れ目を選定する
◆堤体基礎掘削面上で長く連続している割れ目

図2 断層面と堤体基礎掘削面の交線および割れ目データ

②透水構造3次元モデル構築
 透水構造3次元モデルは、①で選定した割れ目データの線とそれを傾斜方向に平行移動した線を単純に連結して構築した。データ線上の複数箇所に走向傾斜が記述されている場合は、中間付近でデータ線を分割し、それぞれの範囲の面を別々に構築した。割れ目にスケッチの精度で十分な幅があり、その両側の線が描かれている場合は、両側のモデル(上限面、下限面)を構築し、2つのモデルの間全体を透水構造とした。構築した透水構造3次元モデルを図3に示す。

図3 構築した透水構造3次元モデル(堤体基礎掘削面下方から)

4.評価方法

 構築した透水構造3次元モデルを使用して透水構造の改良状況を評価した。透水構造モデルとグラウト孔のルジオン値分布を視覚化し、グラウトの進捗にともなって透水構造と交差するグラウトステージのルジオン値がどのように変化したかを確認し、次のように評価した。
◆グラウト孔と交差していない → 改良されているか不明
◆グラウト初期段階から全て低透水(5.0Lu未満) → 透水構造ではない
◆最新段階のグラウト孔に高透水区間あり → 未改良、次の段階のグラウトを実施する
◆最新段階のグラウト孔が全て低透水 → 高透水区間、低透水区間の配列を考慮して評価
  ◆全ての高透水区間の両側に後の段階の低透水区間がある → 改良された
  ◆上記の配列になっていない → 改良されたことが確認できていない

 評価した例を図4に示す。この例では透水構造3次元モデルとグラウト孔のルジオン値分布が次のような関係になっていることが確認できたため、この透水構造はブランケットグラウトによって改良されたと評価した。
◆事前孔、1次孔:高透水区間がある
◆2次孔、3次孔、チェック孔:全て低透水区間であり、かつ、事前孔、1次孔の全ての高透水区間の両側に分布している

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図4 透水構造の改良状況評価例

5.まとめ

 透水構造モデルとグラウト孔のルジオン値分布を3次元的に視覚化したことで、改良状況の確認が容易になった。特に、規定に従って規則的に配置されるグラウト孔に対し、その間をすりぬけるような走向の透水構造がグラウト孔と交差しないことによって改良されないまま見逃されることが防ぎやすくなった。
 一方で、傾斜が変化するような透水構造の場合はモデルと交差しているグラウトステージと実際の透水構造が交差しているグラウトステージが同じとは限らないため誤評価が生じる可能性があるという課題も浮かび上がった。

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