丘陵地を対象とした3次元地質モデル作成

東邦地水株式会社

寺地 啓人  小倉 康史  藤原 聡

 <概 要>

 地質調査業務では、対象地の地質構成や地盤性状を把握して、事業推進にあたり不確定要素となる地質リスクを後続する設計・施工・維持管理へ引き継ぐことを責務とする。地質調査の成果は一般的に地質平面図、地質断面図の2次元図面でとりまとめられるが、側方へ変化に富む地質の場合には、2次元図面だけでの解釈では、関係者間で異なる分布状況の認識を持ち、地質リスクの情報を正しく共有することができない可能性がある。関係者間で地質の分布や地質リスクについての見解を一致させるためには、地質の分布を視覚的に理解しやすく表現することが望まれ、それには地質断面図を重ねた準3次元地質断面図モデルや、3次元地質モデル(ソリッドモデル等)を作成し、3次元的に可視化を図ることが有効である。
 ここでは、地質の層相変化に富む丘陵地(造成地)を対象として3次元地質モデルの作成を行い、そこで得られた知見からモデル作成の利点や問題点、留意点をとりまとめた。 

1.モデル化する丘陵地の特徴

 丘陵地を構成する地質は、新第三紀鮮新世後期~第四紀更新世前期に形成された東海層群である。
 東海層群は、厚さ数m~数十mの凝固不十分な礫層・砂層・シルト層・粘土層が繰返し累重し、側方的にも層準的にも変化に富む。さらに、周辺の地質構造の影響により対象地域では南へ数度~10度程度で傾斜する。
 丘陵地を開析する小河川沿いの谷底低地には軟弱な沖積層が分布する。また、造成に伴う切り盛りにより平坦地化が進んでいる。
 これらによって支持層の分布深度や液状化対象層の分布状況が複雑に変化している(地質リスク)。

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2.準3次元地質断面図モデル作成

【利点】
・従来通り作成する断面図(CAD図)を活用するため、3次元可視化に要する時間が比較的短い。
・断面図の交差箇所や地層の整合性の確認が視覚的に行える。
【問題点、留意点】
・用いる断面図(縦断、横断)の縮尺をそろえる必要がある。
・断面の測線が曲線の場合には、曲線に合わせて断面図を加工する必要がある。
・挟み層など、側方への連続性に乏しく、特定の断面のみに表示される地層は、分布状況を把握しにくい。

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3.モデル化と利活用

【利点】
・準3次元地質断面図モデルでは表現されない断面の間も表現されるため、より地質の分布状況を把握しやすい。
・任意の箇所で断面を切り出すことができる。
【問題点、留意点】
・地質区分が多く、詳細なモデルほど作成時間を要する。
・データ量が少なくてもモデルを作成できるが、その場合は多くの推定を含むモデルとなる。
・詳細な地形を表現するためには、別途3次元の地表面データが必要である。
・ソリッドの形状を修正するためには、境界面のサーフェスから修正する必要がある。
・側方変化に富む地層をモデル化する場合、収集整理したデータだけでは情報が不足することがあるため、地質学に基づく補間用データを作成し調整する必要がある。

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4.まとめ

 準3次元地質断面図モデルは、3次元地盤モデル作成用のソフトウエアを導入すれば、比較的短時間で作成することができる。図面の交差箇所や地層の整合性の確認が視覚的に行えるため、地質調査成果の品質確保に役立つと考えられ、積極的に活用することが望まれる。
 3次元地質モデル(ソリッド)は、任意の箇所で断面を切り出すことが可能であり、地質の分布を視覚的に認識しやすいことから、地質リスクの情報伝達の手段として有効である。ただし、地質区分が多く、詳細なモデルほど作成時間を要し、用いるデータの質や量によっては多くの推定を含むモデルとなるなど、モデル作成における留意点がある。モデル作成を効率的にするためには、関係者間で事前に協議し、モデル作成の目的を明確にしてモデル化する範囲や地質を設定することが重要である。また、要求される精度に応じたモデルを作成するためには、データが十分であるかを精査し、場合によって追加調査を実施するなどの対応が求められる。

5.展望

 情報技術の発達により、地質、地盤情報の3次元的可視化が容易になってきており、また、建設土木分野におけるBIM/CIMの導入が進み3次元地質・地盤モデル作成に対する要望や機会が増えると予測される。今後、3次元地質・地盤モデル作成を広く一般に普及させるためには、地質リスクの伝達手段としてなどの有用性を示し、設計・施工・維持管理の工程でモデルが利活用されることが求められる。そのためには、

  ①用いるデータや作業手順を確認してモデルの品質を確保する、

  ②伝えるべき地質リスクを意識したモデルを作成する、

  ③見やすく分かりやすい表現を工夫するなどを実践し、

3次元地質・地盤モデル作成の技術向上に努めていくことが重要である。