3次元を活用した調査計画から地質モデリングまで
岸 孝司 篠原 貴紀
<概 要>
下流域の河川堤防付近において地質調査を実施するにあたり、陸上部と海上部のボーリング調査計画の立案から地質モデリングまで3次元技術を活用して地質調査を実施した。3次元モデルの作成にあたっては、UAVにより上空からの写真測量を行い、地形モデルを作成した。使用機器及びソフトウェアは次のとおりである。
使用機器(UAV):DJI Mavic 2 Zoom
使用ソフトウェア:Metashape、LandForms、V-nasClair
1.はじめに(3次元を活用した経緯)
◆河川の合流部に位置するため、支持地盤となる岩盤傾斜が複雑と想定され、従来の2次元では建設ライフサイクルの下流側に位置
する設計・施工で不明瞭な領域が残存すると考え、面的な評価が必要と考えた。
◆業務場所は、潮汐の影響を受ける地域であるため、干潮時と満潮時の変化を視覚的に表現することによって、発注者に適切な仮設
計画への理解を得る資料作りを考えた(図-1)。
◆業務の生産性向上を図るため、3次元技術を活用した。
図1 左:干潮時の現場状況 右:満潮時の現場状況
2.仮設計画
調査期間中の大潮満潮位をモデルで再現し、足場種類の選択根拠と仮設桟橋等の必要性について発注者にソフトウェアで説明し、理解を得ることができた。
※干潮時は赤丸の範囲が陸上部となる
3.構築した3次元モデル
当初想定していたとおり、計画構造物の支持地盤となる岩盤の傾斜は複雑化を呈しており、従来の2次元図面では各断面単位の地質構成は把握できるが、奥行き方向が把握し難い(図-2)。地質断面図を3次元化し、岩盤傾斜を面的に表現することで調査地の複雑な岩盤傾斜を把握することができた(図-3)。
図2 2次元地質断面図
図3 3次元地質モデル
4.まとめ
◆発注者の理解
地質調査計画及び地質モデルを3次元技術を活用することによって理解が深まり、十分なコミュニケーションをとることがで
きた。特に仮設計画は発注者から高い評価を受けた。
◆BIM/CIMの活用
建設ライフサイクルの最上流に位置する測量・調査を3次元化することによって設計・施工・維持管理まで一気通貫で活用
することが可能となった。
◆生産性の評価
調査計画から3次元技術を採用したことにより、現地で従来測量をすることなく、机上で安全で最適な仮設計画を立案す
ることができた。3次元モデルには座標を有しているので、仮設の現地再現も容易で内業・外業とも生産性が向上した。
5.その他
下図は地質モデルではないが、3次元技術を活用することは建設分野だけではなく、観光(図-4)や史跡(図-5)等の異分野にも有効な情報となる。3次元の地形情報に地質情報を付加することによって地質業界が異分野への水平展開が期待できる。
図4 洞窟調査(地表面との位置関係及び土被り厚を把握)
図5 1500年代に築城された山城跡の一部