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土壌・地下水汚染を対象とした3次元地質・地盤モデル

株式会社エイト日本技術開発

齋藤 晴紀  渡辺 俊一 

 <概 要>

 土壌・地下水汚染の調査・検討では、地質や地下水と汚染の関係を把握することが重要である。そのため、地質や汚染分布の3次元モデル化は、地質や地下水と汚染の関係を3次元的・視覚的に認識することができる大変有用な方法である。また、汚染メカニズムの解明や調査・対策内容の検討のために行う、3次元の地下水汚染シミュレーションにおいては、地質の3次元モデル化は必須となる。
 ここでは、土壌・地下水汚染を対象とした3次元地質・地盤モデル構築の流れ、モデル化手法、プラス面・マイナス面、着目点・注意点について整理した。

1.はじめに

 土壌・地下水汚染とは、土壌・地下水が人間にとって有害な物質で汚染された状態を指す。有害物質は地下水により移流・拡散するため、地質構成、地下水分布、汚染範囲、濃度分布等を調査し、地層や地下水と汚染の関係を把握することが重要である。土壌・地下水汚染調査解析業務では、追加調査・対策の検討資料や、汚染メカニズムの解明を目的として、3次元地質・地盤モデルの作成や、これを用いた3次元地下水汚染シミュレーションを行うことがある。
 3次元地下水汚染シミュレーションは、流出した有害物質がどのように地下浸透し、移流・拡散するかを再現解析・予測解析し、遮断壁や浄化対策工等の効果予測などに用いられる。

2.モデル構築の流れ

エイト日技_図1.png

3.3次元モデル化手法

 土壌・地下水汚染を対象とした3次元モデルの構築では、地質に加えて、土壌・地下水汚染状況、地下水面の3次元モデル化を行う。3次元化手法としては、地質境界面と同様にクリギング手法等を用いて行うことが多い。

エイト日技_図4.png

図1 地質及び土壌汚染の3次元モデル化の例(参考:1)

4.土壌・地下水汚染を対象とした3次元地質・地盤モデル構築のプラス面・マイナス面

4.1 プラス面
【汚染状況の3次元化】
・汚染範囲、濃度分布、また地質と汚染の関係、地下水と汚染の関係を3次元で視覚的に認識することが可能。
・汚染土壌(地下水)や汚染物質のボリュームを簡単に算出可能。
・濃度毎の表示(○mg/kg以上のみ表示など)、汚染プルームの断面表示などが容易。これまでのように複数の図面ファイル(断面図、平面図)が不要。(図1)
・ソフトによっては、汚染データを時系列的に動画(アニメーション)として示すことも可能。
・次に必要な調査・対策検討や汚染メカニズムの解明の際の有用な材料となる(対策の構造物も同じモデル内に3次元で表示可能)。
・関係者間のリスクコミュ二ケーションを図る上で有効。

【地下水汚染シミュレーション関係】
・3次元地質・地盤モデルから地質構造・汚染分布を移行することで、3次元メッシュモデル(解析モデル)構築の作業を簡略化できる。(図2)
・シミュレーション結果(汚染分布等)を3次元地質・地盤モデル上で表示できる。(図3)

エイト日技_図2.png

図2 3次元地下水汚染シミュレーションモデルの例(参考:2)

図3  3次元地下水汚染シミュレーション結果の表示例(参考:2)

エイト日技_図3.png

4.2 マイナス面
・精度良く3次元化するためには地質同様、汚染データも数が必要。
・汚染データ間の精度の低い範囲の値の一人歩きに注意が必要。(地質モデルと同様)

5.着目点・注意点

・3次元地質・地盤モデルの構築にあたっては、特に汚染の拡がりに関係する「帯水層」、「難透水層」の形状を精度よく再現することが重要。
・汚染データは深度方向も必要。(X、Y、Z、濃度)
・汚染データを機械的に3次元化しただけでは、データの偏りなどから、実際と異なる分布になることがある。その場合は地質構造、地下水流動、汚染メカニズム等を踏まえ、修正が必要。

参考文献

1)環境省.茨城県神栖町における汚染メカニズム解明のための調査 中間報告書.2005,5章,p.108
2)環境省.茨城県神栖町における汚染メカニズム解明のための調査 シミュレーション等報告書.2007,5章,p.5-8 ,p.5-24 ,p.5-27

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