高分解能3次元弾性波探査(HR3D探査)データを用いた地質モデルの構築

株式会社地球科学総合研究所

澤田 大毅  原 彰男  根本 欣典  影島 充万  

 <概 要>

 3次元地質モデルの構築に際して、分解能の高い3次元データを用いることで、基礎となる地質構造解釈を高精度で行うことが可能となるうえ、等深度面の可視化などによって地質的特徴を抽出することができる。ここでは、自社で取得、処理を行った高分解能3次元弾性波探査(以下、HR3D探査)データを用いて、地質構造解釈から、構造モデリング、属性モデリングまでの一連の地質モデル構築を行った事例について紹介する。
 実データに乏しい洋上構造物などの建設ライフサイクルにおいて、本手法で作成したような地質モデルを用いることで仕様の最適化やリスク低減を図ることが可能と考えられる。

1.対象地域と使用データ

・HR3D探査データ(6km x 3km)

(自社で取得、処理を行い、時間領域から深度領域に変換済みのデータを使用)


・公表地質文献(地質図幅など)

※坑井データなし

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2.ワークフロー

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3.HR3D探査データを用いた地質構造解釈

・HR3D探査データから、任意の断面及び深度スライスを用いて精緻な断層及びホライズン解釈を行った。

 

断層解釈
・反射波の不連続面を強調した処理(Variance)を用いて解釈の信頼性を向上させた。

・探査エリア内では高角の正断層や横ずれ断層が卓越する。
 

ホライズン解釈
・断面上で指定した反射波が連続する領域を自動的に抽出する機能(Auto pick)を用いて作業の効率化を図った。

・断層を跨いだホライズンは、断層の落差や層厚、反射波の類似性を考慮して解釈を行った。

・浅部に認められる不整合面は沖積層基底と解釈される。下位の比較的明瞭なホライズン間は整合関係にあり、更新統の砕屑性堆積物と推定される。
 

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4.構造モデリング

・断層及びホライズンをモデル化する際、不自然な凹凸が生じないよう、且つ断層付近の形態が忠実に再現されるよう、スムージングの程度や断層-ホライズン間の距離に関するパラメータ等の調整を行った。

・ホライズン間の整合、不整合関係を定義し、尖滅やオンラップといった累重関係を再現することで、より現実に即したシミュレーションが可能となる。

・Volume Based Modelingという手法を用いることで、従来の手法(Pillar Gridding)に比べ、より解釈に忠実にモデル化することが出来た。
 

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5.属性モデリング

岩相モデリング
・公表地質文献から、モデリング対象範囲は、南~南西の陸域からチャネルやローブによって砂泥が供給されたものと解釈される。また、HR3D探査データの深度スライスからも南~南西方向からのチャネル形状が認められる。

・チャネル及びローブの大きさや形状、分布トレンド等を弾性波探査データを参考に設定し、砂岩・細粒砂岩・泥岩の分布をモデルに反映させた(Object-base Modeling)。
 

物性モデリング
・岩相モデリングで設定した各岩相(砂岩・細粒砂岩・泥岩)毎に孔隙率の分布を想定し、不均質性を考慮した孔隙率モデルを作成した。

・浸透率は一般的に孔隙率と相関が高く、孔隙率モデルと高い相関を持たせるようモデル化した。
 

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6.品質管理・展望

品質管理
・断層解釈は既存の地質資料と整合的であり、高解像度の3次元データを用いたことで、より細かい断層まで捉えられている。

・対象エリア及び周辺に深層坑井データが無いため、ホライズン解釈は坑井データと対応付けられておらず、解釈には不確実性がある。

・属性モデリングについては、実データの無いところから岩相や物性を推定しており、検層やコアのデータを用いてキャリブレーションを行うことが望ましい。
 

展望
・実データに乏しい洋上構造物などの建設ライフサイクルにおいて、本手法で作成したような地質モデルを用いて実地調査の前に岩相やその性状の空間的分布をイメージングすることで、仕様の最適化やリスク低減を図ることが可能と考えられる。

・例えば洋上風力発電の地盤調査等への活用が期待される。
 

参考文献

20万分の1日本シームレス地質図V2 ( 産総研地質調査総合センター,データ更新日:2020年4月6日https://gbank.gsj.jp/seamless/ )

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