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道路新設工事における 3次元地質モデル作成事例

はじめに

大規模切土法面工事において下記を目的として 3 次元モデルを導入した事例を紹介する。
・当初設計方針の妥当性確認
事前調査から想定される地質情報を 3 次元モデルに反映し、当初設計 ( 法面勾配・法面保護工 ) の妥当性確認や追加対策の必要性検討に用いる。
・施工時の安全確保

3 次元モデルに基づき施工前に不安定要素や危険箇所を抽出し、施工業者と情報共有を行うとともに、施工中は危険箇所について TS 測量で法面の挙動を監視することにより、施工時の安全を確保する。
・維持管理情報の提供
事前調査で得られた地質情報や施工時の法面状況 ( 湧水・亀裂・緩み箇所等 ) などの情報を 3 次元モデルに一元化し、供用後の維持管理情報として道路管理者に提供する。

工事概要

工事内容: 東海環状自動車道の岐阜県関市広見地区における道路新設工事 

発 注 者 : 国土交通省    中部地方整備局    岐阜国道事務所

受 注 者 : 青木あすなろ建設株式会社
工事規模: L=440m、掘削工 139,000m³、盛土工 40,570m³ 

分布地質:主として亀裂の卓越するチャートおよび泥岩 一部は崖錐堆積物に覆われている

事前に予測された施工時の不安定要因:

 1. 法面に対して流れ盤構造を示す連続性を有する亀裂面

 2. 地質境界部に形成された破砕質な劣化帯や湧水箇所

 3. 法面の平行方向に急立した層理面などの不連続構造

3 次元モデル作成で期待されること
 ・視覚的に法面と地質構造の関係が分かりやすくなる。
 ・断面図間の空白域も想定地質分布を確認できる。
想定される災害:

 ① 法面に対して流れ盤構造を示す亀裂面に沿った肌落ちや小崩落・落石など

 ② 破砕質な劣化帯や湧水による肌落ちや小崩落
 ③ 法面と平行方向に急立した不連続面による岩盤クリープ性の法面変状・崩壊
 

kokusai_図1.png

作成モデルと得られた成果

工事の進捗に応じたモデル作成

kokusai_図2.png

当初災害要素として挙げあられた①は 3 次元モデル上に表現が困難だったため、②・③の災害要素となる脆弱部や地質構造可視化のため地質境界のみ 3 次元モデル化した。

kokusai_図3.png

事前調査で想定された地質境界 ( 脆弱部 ) は概ね施工時にも同箇所に確認され、施工時の安全管理上の情報ツールとして活用し、安全な施工に結び付けることが出来た。

kokusai_図4.png

工事の進捗に応じたモデル作成

kokusai_図5.png

CIM モデル上に調査情報や施工中の情報を集約し、維持管理情報として道路管理者に提供した。

法面の情報を視覚的に分かりやすい状態で一元化することで効率的な維持管理に寄与する。

適用事例から得られた今後の課題

・3 次元モデル化の対象についての課題

対象事例では、肌落ちや小崩落の素因として挙げられた流れ盤の亀裂面は連続性に乏しく、事前調査での出現箇所の推定や、施工前の 3 次元モデル上への表現が困難であった。このため今回の事例では亀裂沿いの崩落に対しては、3 次元モデルの活用が出来なかった。
このことは、3 次元モデルを活用する際に「どのようなスケールの地質事象をモデル化の対象とするか ( 出来るか )」という問題を事前に十分吟味し、「付与情報の取捨選択」や「3 次元モデルの適用の可否」を検討する必要があることや、モデルスケールの精度を適切に選定することが重要であることを示している。

kokusai_図6.png

・地質境界の自動生成における課題

今回、3 次元的な地質分布を示す地質境界サーフェスを作成するソフトとして「GEORAMA for Civil 3D」を用いた。本ソフトは、「平面図」「ボーリング情報」「断面図」等から最適化原 理を用いて各層ごとに地質境界を推定しサーフェスを作成する。しかし、適用事例のように岩盤の急立した地質構造や変質帯などの不規則な分布を示す地質では、最適化原理に基づく 自動計算ではスムーズなサーフェスを描くことが出来ず、このため技術者の手作業でサーフェスを作成あるいは修正する必要が生じた。また、適用事例では、既存の 2 次元で作成された図面を基に新たに 3 次元モデルを作成したため、作業が重複した。そのため、今後の作業プロセスとしては、調査当初より 3 次元モデルを活用し 3 次元モデルから 2 次元の図面を作成することが望ましい。
・CIM 活用・適用対象事業の選定に関する考え方
事業における 3 次元 CIM の活用・適用の可否は、想定される災害や地質の不確実性等、対象となる地質リスクに対する B/C で評価されるべきものと考える。したがって、今後、同様の事例で CIM を活用・適用するか否かは、事前に地質リスクマネジメント手法などを用いて、客観的に評価を行う必要があるものと考えられる。
 

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