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新築建屋基礎地盤調査における3次元地盤モデルの作成、

追加調査提案の活用事例

株式会社シアテック

眞鍋 泰徳  乗松 宏一  

 <概 要>

新築建屋計画のある地区において、既存の調査結果(地すべり調査、井戸調査)があったが、支持地盤の確認のため、建屋計画位置において追加のスウェーデン式サウンディング試験(以下SW試験)を実施した。既存資料とSW試験結果から地層推定縦横断面図を作成した結果、調査精度が低いと推測される部分が明らかとなった。そこで、3次元地盤モデルを作成し、わかりやすく表現することで追加調査の必要性(調査位置の選定、調査深度の目安など)を検討のうえ発注者へ説明した。追加調査の結果、地盤モデル(支持層分布)の精度向上となった事例について紹介する。 

1.対象地区の紹介 (図-1)

モデル化作成のエリアは、東西約150m、南北約90mの範囲。
斜面下端に河川が流れ、高低差は30m程度。
建屋は河川と斜面の間に造成された平坦地に2棟(仮称A棟、B棟)計画されている。
A棟の計画位置付近は切土、B棟の計画位置付近は盛土により造成されている。

図-1 対象地区概要図

2.利用データ

・平成17年度 既存地質調査報告書データ 地すべり調査
 旧地形の平面図(紙)、ボーリング調査 2本、弾性波探査結果横断面図
・踏査結果(露頭確認)
・測量図面(計画平坦地付近の平板測量)
・本業務ボーリング調査(井戸調査)2本+追加ボーリング1本
・スウェーデン式サウンディング試験 7箇所 

シアテック図1.png

3.利用アプリケーションと使用PC

・五大開発 MakeJiban
・Windows10

・Intel(R)Core(TM)i5-7400 CPU @3.00GHz
・実装メモリ 16.0GB 64Bit オペレーティングシステム

4.モデル作成の目的と課題

(目的) 
 追加で実施したSW試験のうち、盛土地盤であるB棟で実施したSW試験の調査深度が不足(礫の影響による)している可能性が高い、と判断した部分を3次元モデルでわかりやすく表現し、追加調査の了解を得て、支持層分布の精度を向上させる。
(課題)
・追加調査の目的、必要性を理解していただく
・実測平板測量の範囲が、建屋計画のある平坦部が主であり、河川、斜面の高さデータなどが乏しい状態の中で、地形のモデル化を行う。
・計画建屋もモデル化して配置することで、建屋計画と地質調査結果との関係をイメージしやすく表現する。
・既存データ、露頭分布のデータを反映する。

5.モデル化

 5-1 既存データのモデル化(図-2)
 3次元モデル化の範囲決定
  平面図データの3次元化(任意座標)
  平面図コンターに高さを与える
  ドロネー分割にて面作成
       ↓
 ボーリング、SW試験データの入力
  位置、高さデータの測量
  試験結果のXMLデータ作成(地層区分)
       ↓
 地層境界深度データによる境界面の作成
  各試験ポイントを結線
       ↓
 測量、地表踏査における露頭の平面境界作成
  測線がない部分の平面境界を指定
       ↓
 表現方法の決定
  踏査結果の貼り付け、測線断面図の作成
  境界面の表示など

 5-2 モデルの更新(図-3)
 追加調査の計画、提案
       ↓
 発注者の追加調査了解
       ↓
 追加調査実施
       ↓
 追加調査結果の反映
  地層境界(コントロール
 ポイント)データの追加
       ↓
 地層境界線の再計算
       ↓
 モデルの更新

シアテック図2.png

図-2 既存データのモデル化図

6.問題点、工夫した点

シアテック図3.png

図-3 モデルの更新図

 6-1 地形の3次元モデル化
 地形に関するデータが、既存資料の紙データと、平坦地周辺のCADデータのみであった。平板測量の等高線を利用した場合、段差地形や小さなのり面、石積み構造物など微小な部分のデータが作れない。本業務で活用する目的から、細かな地形を正確に表現する必要性は低かったので、代表的な端点(コントロールポイント)の高さを追加で測量し、地形データに加え地形を表現した。

 6-2 SW試験の柱状図データ化
 ボーリング柱状図作成ソフトを用いて、位置情報、地層境界深度の情報よりXMLデータを作成した。
 
 6-3 表現方法
 地層境界線の変化がわかりやすいように、縦横断方向、近接する調査箇所を結んだパネルダイヤグラムで表現した。
 協議資料は、複数方向から見たモデルや表現する縦横断面を間引いて見えやすくしたものも用意した。

7.まとめ、展望

 3次元地盤モデルを作成することによって、特に地層の勾配変化が大きい場合などはその様子が容易に視覚化できるようになる。そのことにより、地質リスクを具体的に把握することも可能となる。活用方法に関しては、協議にはノートPCなどを用いて、地盤モデルをその場で見せることで、より相互理解が深まるものと考える。地形のモデル化に用いるデータが不足している場合は、余裕があればドローンなどを用い写真測量により点群データを取得することで、ビジュアル的にもより魅力的な3次元モデルの作成につながったものと考える。

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