最近の地層学の研究成果から明らかにされた地層境界面の形状

 <概 要>

堆積相解析やシークェンス層序学などの地層を研究する学問は1970年代から急速に発展し,これによって得られた地層の分布形態や累重様式に関する新しい知識は,おもに石油貯留層の探査に適用されてきた.こうした新しい学問の成果を3次元地質解析技術に導入することはできるであろうか? このポスターでは,地層境界を描くときに考慮する地層の分布形態や分布様式と最近の地層学の研究成果から明らかにされた地層境界面の形状について地盤情報データベースを用いた研究例を引用して紹介する.

地層境界を描くときに考慮する地層の分布形態と分布様式(引用1)

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粒度と堆積場によって境界面の形や地層の連続性が異なる.
例えば,礫層の基底は下位層を谷状に侵食することが多く,上面の形も上に盛り上がった形になる可能性がある.

漸移・明瞭・侵食など地層の重なりや関係を
意識して境界面を描く.

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堆積システムとその発達様式を意識する.堆積システム内での地層の重なりや分布様式には,上方細粒化・粗粒化・薄層化など,一定のパターンがある.

地層区分と工学的に重要な地層境界

① シークェンス境界〈曲面+平坦面〉(Sequence boundary:SB)

シークェンス境界とは,シークェンス層序学で不整合面とそれに連続する整合面と定義され,相対的海水準変動の低下速度が最も速いときに形成されるものである.沖積層のシークェンス境界(沖積層基底面)の直下には,安定性の高い洪積層が出現することから工学的にも非常に重要である.

​【成因】

【断面図】

大阪平野の淀川河口部の地下断面(引用1)

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沖積層基底と定義できるシークェンス境界が埋没段丘層の上面から開析谷(古淀川)の基底を結んで描かれている.

相対的海水準変動の低下速度が最も速いときに形成される.

【3次元モデル】

東京低地北部から中川低地南部の沖積層基底面モデル(引用2)

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偏在する実ポイントデータのみでは,曲面と平坦面の組合せからなる複雑なシークェンス境界を正確に表現することはできない.
この事例では,補填データや埋没地形平坦面モデルを用いて地形・地質学的に矛盾のないモデルを作成している.

② ラビーンメント面〈平坦面〉(Ravinement surface:RS)

ラビーンメント面は,海進時に波浪や潮汐の作用で海底が平坦化される侵食面のことである.大阪平野などの沖積低地では海成粘土層の基底面が波浪によってできたラビーンメント面に相当する.工学的には砂質堆積物と均質な粘性土が明瞭な面で接する物性が急変する境界である.また,平坦な面であることから,断層変位などの変形構造の識別が容易で構造運動の復元に有用である.

​【成因】

【断面図】

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大阪平野の伊丹台地の地下断面(引用1)

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海進時に波浪や潮汐の侵食作用によって海底が平坦化されてできる面.沿岸域の堆積物中に明瞭に記録されており,
断面図上では海側に緩く傾く直線で描かれる.

【3次元モデル】

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上町断層帯表層地質の断面(引用3)

初生のラビーンメント面は平坦であることから,構造運動像の復元に有用.沖積層(Ma13海成粘土層)と上部更新統(Ma12海成粘土層)の基底面がラビーンメント面で,両者を比較することによって地盤の傾動傾向と隆起量がわかる.

上町断層帯周辺の表層地質構造(引用3)

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上町断層帯分布域で多数の断面図を作成してそれらに現れる海成粘土層の基底面(ラビーンメント面)の構造を解析し,上町断層帯の表層地質の3次元モデルを作成.

③ 前進堆積体のダウンラップ面〈洗濯板状面?〉(Downlap surface of prograding depositional system:DPS)

前進堆積体とは,高海水準期や海退期に三角州,海浜,砂州などが海側に向かって前進しながら堆積する地層のことである.これらの堆積体は上方粗粒化する傾向を示し,ダウンラップ面をつくりながら前進する.ダウンラップ面は堆積体の前進方向と平行な断面で明瞭に識別でき,ギザギザの鋸歯状線で表現される.この境界面は構成粒子の変化が漸移的あるいは繰り返す特徴があることから工学的には注意を要する.例えば,地下水を止水するためにこの面に矢板や連壁を打つ場合には,十分な根入れをするなど設計・施工上の配慮が必要になる.

​【成因】

ダウンラップ面がギザギザになる要因は堆積物供給量の変化,上流域の気候変動,海水準の小さな変動などとされている.

前進堆積体である三角州の前置層(砂)と底置層(泥)との境界(ダウンラップ面)はギザギザの鋸歯状になることがアメリカの全面露頭の観察と研究から明らかにされた.

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【断面図】

大阪平野の淀川沿いの地下断面(引用1)

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【3次元モデル】

厚い沖積海成粘土層の上に三角州が前進し,ギザギザのダウンラップ面が形成されている.

参考文献

1)増田富士雄・佐藤智之・伊藤有加・櫻井皆生,Shazam層序学をボーリングデータベース解析へ適用する試み-大阪平野の表層地質研究を例に-.地学雑誌,2013,122, p.892–904.
2)木村克己・花島裕樹・石原与四郎・西山昭一,埋没地形面の形成過程を考慮したボーリングデータ補間による沖積層基底面の三次元解析:東京低地北部から中川低地南部の沖積層の例.2013,地質学雑誌,119, p.537–553.
3)櫻井皆生,地盤情報データベースから推定した上町断層帯の表層地質構造.平成28年度日本応用地質学会研究発表会講演論文集,2016, p.37-38.

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